1. はじめに
『ベストプレープロ野球’00』(以下,『ベスプレ』)は,2000 年 10 月 20 日に発売された Windows 用本格プロ野球シミュレーションである.自由に設定することができる選手データや監督データをもとに,プロ野球のペナントレースをシミュレートすることができる.これまで,選手データにおける能力値および監督データが成績にどう影響するかを巡って,多くの議論がなされてきた.しかし,検証可能な形で結果が公開された研究は極めて少ない.
本稿では,この問題に統計的分析の立場から答えるため,分析・検討が比較的容易なチーム成績に注目する.ここで,チーム成績に注目した理由は後述する.
まずは,本稿における研究手法を簡単に述べる.選手データ・監督データには『ベスプレ』の初期設定である "team2000.txt" を用いる.これには,セ・リーグとパ・リーグが各 6 球団ずつ,計 12 球団のデータが登録されている.また,ペナントの日程には同じく『ベスプレ』の初期設定のひとつである "日程2000.prg" を用いる.これは各チーム 135 試合のペナントレースの日程で,交流戦はない.最後に,リーグデータは同じく『ベスプレ』の初期設定である「セ・リーグ:DH 制 なし・延長回 15,パ・リーグ:DH 制あり・延長回 12」を用いる.
次に,まず初期設定のままでペナントレースを行い,全チームのチーム成績を記録する.これを 100 シーズン繰り返す.こうして得られた標本を "ORIGINAL" と名付ける.次に,"D" チームの選手データで,「守備力」の「遊」(遊撃手)に設定されているパラメータ("−" となっているものを除く)をすべて "S" にして,同じくペナントレースを 100 シーズン試行する("D" チームを選んだのは,単に "team2000.txt" の先頭に登録されていたからという理由のみである).得られた標本を "D_SS.S" と名付ける.同様に,「守備力」の「遊」パラメータを "A"〜"E" に変えて,それぞれ 100 シーズンずつ試行する.こうして 5 種類の標本が得られるが,これらの標本は "D_SS.A"〜"D_SS.E" と名付ける.同じ要領で,「守備力」の「3」(三塁手)パラメータについても,"S"〜"E" に変えて,それぞれ 100 シーズンずつ試行し,得られた標本を "D_3B.S"〜"D_3B.E" と名付ける.以上で,12 チーム・100 シーズン分のチーム成績で構成された 13 種類の標本ができたことになる.なお,今回記録したチーム成績の項目は,以下の通りである.
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■試合成績
W: 勝利, L: 敗戦, D: 引き分け, WP: 勝率, AVG: 打率, ERA: 防御率
■打撃成績
G: 試合, AB: 打数, H: 安打, HR: 本塁打, RBI: 打点, SB: 盗塁, BB: 四死球, SO: 三振
■投手成績
GP: 登板, IP: 投球回, CG: 完投, S: セーブ, SP: セーブポイント, Ha: 被安打, HRa: 被本塁打, BBa: 与四死球, K: 奪三振, ER: 自責点
■守備成績
E: 失策
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なお,本研究ではデータ収集・分析のすべての段階において CRAN(The Comprehensive R Archive Network)の提供する統計計算のためのフリーソフトウェアである R を用いた.R については,CRAN のウェブサイト(https://cran.r-project.org/)を参照されたい. |